こんにちは。
『わが家の最終的解決』絶賛上演中@恵比寿・エコー劇場。
実は、WEB掲載用に書いた長ったらしいコメントがあったのですが、
諸々の事情で掲載叶わずだったので個人的にブログにあげます、今更。
この作品への願いとか、祈りとか。
ただのコメディじゃないの、わたしにとって。
以下↓
アガリスクエンターテイメントの熊谷有芳です。
待望の『わが家の最終的解決』再演。
わたしにとって、劇団に入って最初の公演だったこともありますが、思い入れの強い作品です。
この公演は、不勉強な自分にホロコーストとは・ユダヤ人とは・ナチスとは、を教えてくれました。
最近また改めて本を読んだり映像を見たりしていますが、改めて大きなショックを受けています。作品について、不謹慎だと感じる人も少なくないと思います。
センシティブな史実をコメディにするのですから。
最近、戦争がなくならないことについて考えていました。
自国を負かした敵を憎み、報復のために敵国を攻撃していては、あなたもまた戦争を始めた人になってしまうよ。
憎むべき敵と一緒だよ、と。
しかし、それが殺したいほど憎たらしい相手だということも分かるのです。
「こんな酷い目に遭わせたのだからお前らも同じかそれ以上傷つけ」という感情は、人間に備わっている機能なんじゃないかと思ってしまいます。憎しみ、報復。
現代の日本に生きてるわたし達にはあまりピンとこないものですが、まずこの感情がわからないと、本当に「愛と平和」なんて叫べないな、と思います。
こんな平和ボケしてるわたしですが初演に引き続きエヴァ役をやります。
エヴァ・オッペンハイマーは文筆を嗜み、聡明で情熱的、差別や戦争は全く許せず、隠れ住み生き延びてるだけの自分にもどかしさを感じているユダヤ人女性。
恋人はナチスの秘密警察「ゲシュタポ」の青年で、彼女にその事を隠していました。
二人の立場には大きな隔たりがあります。
でも心から愛し合っていました。
…いや「愛し合っていました」って、そんなこと本当に可能なんでしょうか?
「可能だ」と全力で叫びたい自分と、「これは…無理だ……」と絶望してしまう自分とがいます。
その二つの感情は決して交わることはなく、妥協点もなく、ただただ同時に存在してしまってるのです。
この絶望的シチュエーションラブコメディを、しっかり肌で感じて演じるにはどうしたらいいのか。
一度演じてるのに、途方も無い遠さを感じています。だってこんな悲しい歴史に救われないフィクションを足して、それを盛大にコメディにしようというのですから。
それでも、コメディです。
どんな結末になろうともそこには悲しみを乗り越えられる笑いがあるのです。
過去は決して消えないし、癒えない傷もある。
誰かに向けた大袈裟なメッセージはないかもしれないけれど、わたし達アガリスクエンターテイメントにとってはコメディを続けることこそが「愛と平和」なんだと思います。
わたしは、ただその事を信じて演じれたらいいなと思っています。
皆様のご来場を、心よりお待ちしております。
2018年12月くらいに書いた文章
熊谷有芳
アガリスクエンターテイメント
『わが家の最終的解決』
恵比寿・エコー劇場
1/25(金)〜1/29(火)
※公演前日24時まで・当時精算のみ